借金の時効とは?成立条件と注意すべき落とし穴

何年も前の借金について、突然請求が届いた。「もう時効では?」と思っても、払う約束をしてよいのか、無視してよいのか迷いますよね。

まず、封筒の差出人が裁判所なのか、請求している会社なのかを見てください。対応の順番が違います。

時効は、年数が過ぎれば自動的に適用されるものではありません。条件を満たしているかを確かめたうえで、「時効の制度を使います」と相手に伝える必要があります。これを「時効の援用」といいます。

古い請求について確かめる前に、一部を払ったり「払います」と約束したりすると、時効に影響することがあります。

一方、裁判所の書類は、時効だと思っても放置しないでください。書類に書かれた期限を先に見ます。

下の表から、自分に近い状況へ。法律の詳しい条件は、その後にまとめています。

目次

まず、届いた書類と困っていることを分ける

いまの状況先にすること
裁判所から訴状・支払督促が届いた書類と封筒を保管し、裁判所名・事件番号・提出期限を確認。時効と思っても放置せず、裁判所の書類への対応へ。
古い借金の請求が業者から届いたすぐに支払約束をせず、契約日・返済履歴・裁判の有無を整理。以下の時効の条件を確認。
今月の返済期限に間に合わない時効を待つ対処とは別です。今月払えないときに今日やることで、借入先への連絡と家計の整理から進めます。

亡くなった家族の借金の請求なら、自分の古い借金とは別に、相続についても確認が必要です。相続放棄は、原則として「自分のために相続が始まったことを知った時」から3か月以内に、家庭裁判所へ申述する手続きです。督促を受け取った日から必ず3か月、とも限りません。時効を待って放置せず、亡くなった日・相続人になったと知った日・届いた書面を持って早めに法律相談へ。事情に応じた期間の判断や、期間を延ばす申立てについても確認してください。

専門家へ相談するときの一言

「古い借金の請求が届きました。時効に当たるかと、この書類への対応を相談したいです。契約日や最後に払った日は、まだ全部分かっていません」

これは弁護士・司法書士などへの相談文で、請求元へ送る返答のひな型ではありません。裁判所からの書類があるときは、裁判所名・書類名・期限も先に伝えます。

時効の年数は、どの日から数える?

今の法律の5年・10年と、数え始める日

借金の説明で出てくる「債権者」は、お金を返してもらう側。その返してもらう権利が「債権」です。

今の民法166条では、原則として次のどちらかに当たると、その権利は時効で消滅すると定めています。

  • 返済を求める権利を使えると知った時から、5年間その権利を使わない。
  • 返済を求める権利を使える時から、10年間その権利を使わない。

「知った時」と「権利を使える時」は、同じ意味ではありません。どの日から数えるかを、次に見ます。

借金の場合、手がかりになるのは契約で決まっている返済日。分割払いならそれぞれの返済日、残りをまとめて請求できる状態になった日、過去の裁判の有無なども関わります。

「起算点」は、時効の期間を数え始める日のことです。残りをまとめて請求できる状態になることを、契約上「期限の利益を失う」と表すことがあります。いつも最後に返済した日から数える、とは限りません。

古い契約には、改正前のルールが関わる

2020年4月1日より前に債権が生じた場合だけでなく、債権が同日以後に生じていても、その原因となる契約が同日より前に締結されていた場合には、原則として改正前の時効期間が適用されます。

改正前の期間は、消費者金融・カード会社・銀行など会社からの借入れなら原則5年です。信用金庫や個人からの借入れなどは10年になる場合があります。

2020年以後に返済や請求があったという理由だけで、自動的に現在の5年・10年のルールへ切り替わるわけではありません。

古い契約では、契約書や取引履歴をもとに個別判断が必要です。

年数が過ぎた後も、時効を使う意思を伝える

必要な期間が経過することを「時効の完成」といいます。ただし、裁判所が自動で時効を適用するわけではありません。借りた本人などが、時効を使う意思を伝える「援用」が必要です。

本人が援用の意思表示をすることも法律上は可能です。ただし、起算点、改正前後の法律、過去の裁判、一部返済や支払約束の有無を誤ると、期待した効果を得られないことがあります。

途中の出来事で、時効の数え方が変わる

完成猶予:一定の間、時効が完成しないようにすることです。それまでの期間を、すべてゼロにするという意味ではありません。

更新:それまで進んでいた期間を数え直し、新しく期間が始まることです。

請求の方法や裁判の結果によって、扱いは変わります。場面ごとに見ていきましょう。

裁判や支払督促の手続きがあるとき

裁判や支払督促の手続きが始まると、その手続きが続いている間は、原則として時効は完成しません。

その後、確定判決などで「返済を求める権利」が確定すると、手続きが終わった時から、時効の期間を新しく数え始めます。

返済を求める権利が確定しないまま手続きが終わったときは、扱いが違います。原則として、終わってから6か月間は時効が完成しません。期間をゼロから数え直す、という意味ではありません。

確定判決や、それと同じ効力を持つものによって権利が確定したときは、もとの時効期間が10年より短くても、その後は原則10年になります。

裁判所ではなく、請求元から支払いを求められたとき

請求元から督促状や請求書が届いただけでは、それまでの期間はゼロに戻りません。

裁判を使わずに支払いを求めることを「催告」といいます。催告があると、原則としてそこから6か月間は時効が完成しません。

ただし、この6か月の間に同じように請求を繰り返しても、それだけで6か月ずつ延び続けるわけではありません。

一部返済や支払約束をした場合

時効が完成する前に、一部を返したり、相手に「この借金を返す義務がある」と認めたりすると、その時から期間を数え直す場合があります。法律では「権利の承認」と呼びます。

必要な年数が過ぎた後でも、返済や支払約束をすると、その後に時効を使えなくなる可能性があります。完成する前と後で扱いが違うため、過ぎた年数だけでは判断できません。

ただし、少額を支払ったという事実だけで、すべてのケースが機械的に同じ結論になるわけではありません。支払額、交渉の経緯、発言内容などを踏まえて判断されます。古い借金の請求を受けたら、一部返済や支払約束より先に、時効の状況の確認を。

電話や書面で支払う意思を示した場合も、内容や前後のやり取りによっては債務の承認と判断される可能性があります。一方、電話に出たことや会話をしたことだけで、当然に時効が更新されるわけではありません。

借金が時効かどうか調べるには?手元の書類で確認すること

確認前に返済や支払約束をしない

手元の書類で、今の請求元、最初に借りた相手、契約日、最後に借りたり返したりした日、請求額を見ます。過去に裁判所から書類が来ていないかも、分かる範囲で振り返ります。

請求元が変わっている場合もあります。相手の説明だけで返済や分割払いを約束せず、書類を相談先に見てもらってから対応を決めます。

裁判所からの書類は放置しない

貸金業者や債権回収会社からの連絡と、裁判所から届いた訴状・支払督促は分けて考えてください。裁判所からの書類は放置してはいけません。

支払督促を受け取ってから2週間以内に、内容に異議があると裁判所へ申し立てなければ、請求した側の申立てにより「仮執行宣言」が付されます。

これは、給与や預金などを差し押さえる手続き(強制執行)を、請求した側が申し立てられる状態になる、ということです。

届いた日に自動で差押えになるわけではありませんが、放置せず、裁判所名・事件番号・期限を弁護士や司法書士へ伝えてください。

支払督促を受け取ったときの確認事項は「裁判所から支払督促が届いたら」にまとめています。

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相談先がまだ決まっていないなら、届いた書類を持って相談できます。

契約書・返済履歴・督促状を保管する

  • 契約書、利用明細、返済時の領収書
  • 債権者・債権回収会社から届いた通知
  • 裁判所から届いた封筒と書類一式
  • 電話した日時、相手の部署・氏名、会話内容のメモ

古い書類でも、契約や返済の時期を確かめる手がかりになります。捨てずに一つの袋やファイルにまとめておくと、相談へ持っていきやすくなります。

時効を使う意思は、どう伝える?

内容証明郵便は法律上の必須条件ではない

時効援用の意思表示に、法律で定められた特定の書式や内容証明郵便の使用義務はありません。ただし、「いつ、誰が、どのような内容の通知をしたか」を証拠として残すため、内容証明郵便と配達証明を利用する方法があります。

内容証明は、いつ、どのような内容の文書を誰から誰へ差し出したかを証明する制度です。文書の内容が真実であることまでは証明しません。

また、内容証明だけでは配達された事実の証明にならないため、必要に応じて配達証明を併用します。

過去の経過が分からないときは、手元の書類から相談する

どの専門家に相談すればよいか迷う場合は、弁護士・司法書士・公的機関の違いを整理した記事も参考にしてください。

  • 契約書や返済履歴がなく、起算点が分からない
  • 2020年4月1日より前の契約で、改正前の法律が関係する
  • 過去に一部返済や支払約束をした可能性がある
  • 判決、支払督促、和解調書などがある
  • 裁判所から新しい書類が届いた
  • 援用通知後も請求が続いている

司法書士へ依頼する場合は、認定の有無と代理権の範囲も確認してください。

時効を使えなくても、返済の相談はできる

時効が完成していなければ、放置している間にも、支払いが遅れたことによるお金(遅延損害金)が契約や法律の範囲で加わり、請求額が増える可能性があります。

利率や増える額は契約によって違います。「年20%」「5年で倍」と一律には決められません。

時効を援用できなくても、返済条件の見直しや債務整理を相談する道はあります。返済可能な金額、収入、財産、保証人の有無を伝えてみてください。

最後に、書類と期限をもう一度見る

  • 年数をどの日から数えるかは、契約や過去の経過によって違います。
  • 2020年4月より前の契約には、改正前のルールが関わります。
  • 裁判や支払督促の手続きがあると、時効が完成する時期が変わることがあります。
  • 一部の返済や「払います」という約束も、時効に影響することがあります。
  • 裁判所の書類は放置せず、書面の期限を相談先へ伝えます。
  • 内容証明郵便の使用と専門家への依頼は、法律上、必ず必要な条件ではありません。

請求書だけでは判断できない場合は、契約書、返済履歴、届いた書類を持って、弁護士または対応範囲内の司法書士へ相談してください。手元にない資料は、ないと伝えるところから。自分だけで時効の結論を出そうとせず、確認を手伝ってもらいましょう。

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古い借金の請求が届いたら、請求書と手元の返済記録を見せて、時効に当たるかと、当たらない場合の返し方まで聞いてみてください。

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この記事を書いた人

借金問題と債務整理を経験し、現在も生活の立て直しを進めています。本人の経験と確認した公的情報を分けながら、借金・家計・ポイ活について発信しています。

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